夢の続きは隣の部屋で…
「あっ…」

目の前にいたのは沢城拓登本人だった。
新学期が始まったからイメチェンしたのだろうか、暗めの落ち着いた髪色に立ち上げバングのショートヘアが大人っぽさを醸し出している。この前とは違う印象に、乃里花はドキリとした。
拓登は横目で乃里花を見ると、そっぽを向いてしまった。




助けてくれた彼の名は福丘颯太(ふくおか そうた)、拓登と同じ高校に通う2年生だ。


「急いでてちゃんと見てなかったけど、その制服、隣の女子高のだよね?」

「はい、今日入学式で」

「おーおめでとう!中学もこの辺??」

「いえ、私、家が遠くて…隣の県の町原市ってところで」

言いながら、颯太の奥に立つ拓登のほうをちらっと見る。拓登は話を聞いているのかいないのか、無表情でケータイをいじっていた。

「あれ?町原市って…拓登も確か小さいとき町原に住んでたって言ってなかったけ?」

ぽいっと颯太から飛んできた爆弾に、拓登も思わず手を止める。

「あ…あぁ、昔、な」

「そう、なんだ!偶然…だね」


知ってるよ!たっくん!!私たち結婚を約束した幼馴染だったんだよ!


そう言いたくなる気持ちをグッと抑えながら、乃里花は他人のふりをした。
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