夢の続きは隣の部屋で…
拓登の誘い
「ちょ、離して!」
エレベーターホールまで来ると、さすがの乃里花も冷静さを取り戻したのか素早く拓登の腕から逃れる。
「いちいち痴話喧嘩に巻き込まないでよ」
怒った口調でそう言うと、乃里花はエレベーターではなく階段に向かう。拓登は小さく息を吐くと、少し後ろから追いかけることにした。
「なに?お前こそデート?」
「ええ、なにか文句でも?」
「颯太?」
「そう、あなたと違って颯太くんは優しいし頼りになるの。それに話だって面白いし―今日だって凄く楽しかったんだから」
「なら付き合えばいいじゃん。どうせあいつ、お前のこと好きだろ」
「えっ、、そ、それとこれとは…」
さきほどのゴタゴタで忘れそうになったが、颯太に告白されていたことを思い出す。3階と4階の間にある踊り場まで来たところで、乃里花は動揺のあまり足を止めてしまった。
「きゃっ…!」
その隙を逃すまいと、拓登は乃里花の腕を捉え、抵抗できないように壁へと押し付ける。その衝動でネコのキーホルダーと共に、鞄が床へと落ちた。
「お前さ、今から俺の部屋、来てみる?」
「ちょ///…それ、どういう意味?」
「どうって、、颯太じゃなくて俺にしろってこと。…せっかくだから、本当に俺の彼女になっちまえよ」
「なに言ってっっ…///」
乃里花の頬に手を添えると、親指で軽く唇をなぞる。突き刺さる視線と高圧的な態度に、乃里花は上手く言葉が出てこなかった。