夢の続きは隣の部屋で…
「ごめんね、急に呼び出したりして」
「へーきへーき、ヒマすぎてゲーセン行こうとしたとこ。あー、ここじゃあれかな?公園でも行く?」
放課後、日曜と同じ場所で待ち合わせした2人。きっとこの前の返事だろうと悟った颯太は、ここだと話ずらいだろうと乃里花を公園へと誘った。
駅から歩いてすぐのところに小さな公園がある。さすがに18時近くになると子どもの姿はなく、新緑が風に揺れる音だけが聞こえる。2人はベンチに座ると、ちょうど街灯がともった。
しばらく2人は黙ってお互いの出方をうかがう。
「颯太くん、あのね―」
「乃里花ちゃんてさ、初恋いつだったの?」
「え…っ?」
一瞬、乃里花の思考がとまる。
「俺はね、小3だったよ。相手は同じクラスの子、隣の席でさー、授業中いっつも2人でノートの端に落書きして見せあったりしてて、すっげー楽しかった」
「あ…うん」
「なんか良く分かんねーけど、急に好きってことに気づいたんだよね。したらなんか気まずくなってさ、なにも出来なくなった」
「…」
「そのまま夏休みが来て、明けたら席替え。その子、そんとき隣の席になったやつとも同じようなことしてて…それでさ、あ~俺のこと好きでもなんでもなかったんだー!って儚い恋は終わったってわけ」
「…そう、なんだ」
なぜ颯太が急に初恋の話をしてきたのか分からないが、乃里花は黙って聞いていた。
初恋、その言葉は今の乃里花にはとても重たい言葉に感じる。