夢の続きは隣の部屋で…
「乃里花ちゃんは?」
「私は…」
「俺、聞きたいんだ。乃里花ちゃんの初恋の話」
「…私は幼稚園のとき、1つ上の学年のお兄ちゃん。大雨で傘が壊れちゃって…そのときにね、傘をくれた子なの…」
最初は言葉を選びながら慎重にゆっくりと話を始めた。
しかし次々と出てくる拓登との思い出は、どれも温かく鮮明に覚えている。一度言葉にしたら、止まらなくなった。
「…でね、よく意味も分かってないまま、結婚しよう!なんて約束までして…。。でも、たっくん、、その子が小学生になるとき引っ越して遠くへ行っちゃった」
「そっか…」
「私ってバカだからさ、12年後に再会して、結婚するんだーって……今の今までずっと…信じてたの、でも、もうやめにする。だから颯太くん、私とつき―」
「その『たっくん』ってさ、拓登のこと?」
乃里花の言葉を遮るように、颯太が核心をつく。
「え!?なんで…!?」
「やっぱり…。最近なんか拓登の様子もおかしくてさ、どーしたんだろって思ってたんだけど」
颯太はベンチから立ち上がると、乃里花に背を向けたまま歩き出した。