夢の続きは隣の部屋で…
「…期待を持たせる訳じゃないけど、私も思い当たることあるよ」
「え?」
沈黙をかき消すかのように、突然、悠果が話を始めた。
「すっごい昔さ、拓登からオムライスの話を聞いたことがあって」
「オム…ライス?」
「あいつ、料理得意じゃん?結構リクエストにも応えてくれるわけよ。でもさ、唯一オムライスだけ、いくらお願いしても作ってくれないの」
「えっ…?」
「別にたまごが嫌いなわけじゃないし、なんでかなー?って思うじゃん。それでね、一度だけ、理由を聞いたことがあって」
「うん…」
「『オムライスは特別だから』―だって、なにそれって思って…、でも、それ以来リクエストするのやめたんだ」
悠果はクスクス笑いながら話を続ける。
「…でもさ、乃里花には作ってあげたんだよね」
「…」
乃里花は返事に困った。
初めて拓登の部屋に行った日、確かにオムライスを作ってくれた。
そういえば、颯太も拓登のオムライスを食べるのは初めて。そういっていた気がする。
「きっと、拓登にとって乃里花は再会した時から特別な存在なんだよ」
「とく、べつ?」
「でも!これでやーっと分かった!!私じゃダメなわけ」
悠果は急に大きな声を出すと、大きく背伸びして両腕をテーブルに投げ出した。