夢の続きは隣の部屋で…
通学電車と拓登
本人に確認をとるのは容易なことではない。
一度、覚えていないと言われた事実を、撤回させねばいけないからだ。
悠果は親切にも仲介役を買って出たが、やはり自分の目と耳で確認したいと、乃里花はそれを断った。
タイミングをつかめないまま、数日が経過する。
あれから颯太は拓登になにか言っただろうか。
乃里花は、それを確認する勇気すらもてないでいた。
「やばっ!遅刻っ!!なんでアラーム鳴らないの~!!」
乃里花は猛ダッシュ駅へと向かう。
いつも7時にセットしていたケータイのアラームが、今日は鳴らなかった。
…というのも、昨晩久しぶりに母と長電話し、そのまま充電せずに寝てしまったから。
いつもより20分ほど後に来る電車、それに乗ればギリギリ間に合うはず。乃里花は駅へと急いだ。
「はぁ、っ、よかった、間に合いそう…って、あっ…」
「っ…」
駅の改札機に定期をタッチしたとき、隣の改札機を通る拓登と目が合った。
いつも会わないはずの2人が、乃里花の遅刻によって鉢合わせする。
「…おはよ」
「…ぉぅ」
なんでこのタイミングで!?
乃里花は逃げるようにホームへと続く階段を駆け上がる。
まさに逃げるが勝ち。である。