夢の続きは隣の部屋で…
ドアのすぐ横で、2人は向かい合って立っている。
周りは多くの大人たちで埋め尽くされ、上手く身動きが取れない。
『ちっ…近すぎる///
やばい、走ったから汗かいて髪、くさくないかな…』
そんな心配をよそに、電車はカタンコトンと規則的な音を立て、目的地へと向かっていく。
2駅我慢すればこの事態から解放される。乃里花は目の前の拓登を意識しないようギュッと目を瞑った。
動き出して約2分。そろそろ次の駅に着くかと思われたそのとき、突然車内アナウンスが鳴り響いた。
『緊急停止します、ご注意ください』
アナウンスと共にブレーキ音が車内にこだまする。
「きゃっ!」
急激な速度変化に、乃里花は慣性の法則に逆らえず、前へ体が持っていかれ目の前の拓登へと飛び込む。
乃里花の頬が拓登の胸元に密着した。
『!!』
一瞬で乃里花の頬は真っ赤に染まる。
「ご、ごめ…って!?」
乃里花は慌てて身を引こうとしたが、腰に手を回され動くことが出来ない。
「危ないからくっついてろ」
乃里花は身をまかすことを強要され、恥ずかしさのあまり顔を隠すように下を向く。
制服越しに聞こえてくる拓登の心臓は、乃里花と同じくらいドキドキと急ぎ足で脈打っていた。
さすがの拓登もこの状況に緊張しているのだろうか、乃里花は少しだけ安心した。