夢の続きは隣の部屋で…
車が立ち往生している踏切は、次の駅の先にある踏切らしい。
電車はゆっくりした速度で次の駅に停車すると、ひとまず乗客を解放した。
ただ、ここから先の運転の目途は立っていない。
乃里花の学校は2駅先、歩くと1時間以上かかる。
バスやタクシーで行くことは可能だが、どちらもすでに長蛇の列ができていた。
改札を出た乃里花と拓登は、行列を眺めながらこれからのことを考える。
「わっ、すごい人!バス乗るのも時間がかかりそうだけど…とりあえず並ぶ?」
「いや、俺は良い」
そういうと拓登はバスの列と反対方面へ向かって歩きだす。
「ちょ…っ」
乃里花は慌てて追いかけようとしたが、バスに並ばないと学校には着かないことを考えると、その場から下手に動くことが出来ない。
仕方なく拓登を残しバスへの列に並ぼうとしたそのとき…
「乃里花!今から俺に付き合え」
拓登の大きな声が響き渡る。
10mほど離れた位置からでもはっきり聞こえる音量に、乃里花はビックリして足を止める。
それは、近くを歩いていた人も思わず振り返るほどの迫力だった。
「なに言って、、私、学校に―」
「良いから、ほら行くぞ」
それだけ発すると、拓登は乃里花に背を向け歩き始めてしまった。
「まっ、待ってよ!」
あまりにも突然の誘いに、乃里花はただ慌てて着いていくことしか出来なかった。