運命×GAME
あたしはうつむいた。


やっぱり、他に犠牲を頼むのは無理がある。


「『助けようとは思わない事』」


聖也がボソッと呟いた。


それはただの仮説で、思い込みで、信憑性なんてどこにもないことだった。


いつか、聖也が言っていた。


『助けよう』とか、そんなおこがましい気持ちを捨てて行動してみたらどうだろうかと。


「まさか、そんな事で助かるとは思えないよ」


あたしは思わずそう言っていた。


「そうだけど、でもどうせ俺たちは今日死ぬんだ。なにかやってみてもいいと思わないか?」


そう言う聖也の目が輝いている。


自分が死ぬとわかっているのに、助かる可能性に欠けている聖也にあたしは呆れながらもほほ笑んだ。


「バスには乗らない。そうすればあたしと聖也は助かる」


穏やかな口調でそう言った。


しかし、聖也は左右に首を振る。


「バスに乗らなくても、別の方法できっと死ぬ」


その言葉にあたしは反論できなかった。


今までだってそうだったように、きっと聖也の言う通り別の方法で死ぬんだろう。


死ぬと言う事自体に、変化は起こらない。


目の前が涙で滲むのが見えた。
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