ぼっちな彼女と色魔な幽霊

ホームルームが始まる前も、ひとりでそんなことを思い出してしまい口元が緩んでしまった。

だけどああやって好きに過ごしているんだな、いつも。

記憶を戻す為にわたしと一緒にいない時間はきっとヨウなりに色々見たり歩いたり調べたりしてるんだろうな。

わたしに言わないだけで。





掃除が終わり才伽ちゃんと教室へ戻る。

ヨウはホームルームの途中に現れてまた何処かへ行ってしまったみたいで気配がない。

入り口のドア枠に手をかけると女の子の笑い声がこだました。

反射的にビクリとなり、立ち止まる。

楽しい笑いというより、乾いた悪意のあるような笑い声に聞こえて入ってはいけない気がしたんだ。

「二嶋かっこいいけど、誰にでも声かけてる感じうざいよね。クラス全員と話せますみたいな」と、教室の中から会話が聞こえた。

山下さんだ。クラスでも目立つ子だから声だけでわかった。

ということはきっと山下組が話してるに違いない。

「それわかる」

「校外学習のグループわけのときもちょっと思ったよ。ぼっちな子入れてあげて優しいでしょみたいな」

「うんうん」

「てかさあの子、二嶋と同じ委員会入ったとか聞いたよ。追っかけ?」

また笑い声が響く。

あの子ってたぶん、わたしのことなんだと思う。

一気に心拍数が速くなる。

どうしよう。

わたし、存在自体確認されていない微生物みたいに、誰からも何からも気にされてないと思っていたのに、こんな風に言われてたんだクラスメイトに。

みんなもそう思っているのかな。

「大丈夫?」と、才伽ちゃんが小声で後ろからわたしに声をかけた。

中にいた数人の子が入り口を見た。

はっとした表情をした子もいたけど、山下さんがくすくす笑い始めると、安心したように笑いが広がっていく。

すごく不快だった。

でも、とりあえず二嶋くんに迷惑をかけちゃいけない。
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