ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「夜中だったらいいだろ」
「夜中だから怖いのよ」
「んじゃあ昼間?」
「それもそれで怖いけど。とにかくダメだよ。ていうかなんで借りたいの?」
「なんか、俺、今日の危ない運転のチャリ見たらなんか引っかかって」
そう言われると、止めづらくなる。ヨウの言う引っかかりには何かある。この前だって、断片的な記憶を呼び起こしたのだから、何かここで思い返すかもしれないし。
そうして、結局こうなった。
ママとパパの目を盗んで家を抜け出し、自転車を取り出す。
わたしは自転車のハンドルを握って、後ろにヨウが乗った。
なんでわたしが男子を後ろに乗せなきゃいけない。
だけど、幽霊騒動を起こすよりはいいかと、ペダルを踏んだ。
平坦な道をまっすぐ走っているだけなのに、ふらふらと蛇行運転するわたし。そんなに重いってわけじゃないけど、思えば二人乗りが初めてだから、うまくバランスが取れなかった。
「どう?なんか思い出せた?」
「どうってなー」
「俺が前だったのかな」と、呟いた。
「えーっ?」
「坂、ここの辺ある?」
「あー。もうちょっと行ったら、あるよ。短いけど、下り坂」
「勢いよく下ってくれねーか?」
「……怖いから無理!」
「行け」
「そういうのよくないと思います。いじめだと思います。自転車だって危ないんだからね!」
「大丈夫だ。守ってやるから」
そう言うけど、なんだかまったく信じられない。