ぼっちな彼女と色魔な幽霊
結局、ギンガムチェックのシャツにデニムの裾を折って、足元にはスリッポン。
「こういうの好きなの?」
「無難な服がそれしかなかっただけだよ。まあ、派手とダサくなければ別になんでもいいけどな」
「別にヨウは恥ずかしくないじゃん。わたしがダサくても見えないんだし」
「どうせなら少しでも可愛い女とデートしたいだろうが」
「……デート?」
「なんだそのほくそ笑んだ顔は」
「だっておかしくてデートって……」
「いいから行くぞ」と腕を引いた。
映画は何部作も続いているカーアクションだったけど、わたしは見たことがなかった。
行く途中でヨウは話しかけてくるけど、いちいち答えてたら不審者になってしまう。
返事をしないでいると「無視すんなよ」とつっかかる。
人がちょっといないところで、「わたしにしかヨウが見えないんだから、気軽に話しかけないでよ。変な人だとしか思われないでしょ?」 と小声で訴える。
「バーカ。世の中のほとんどがお前のことなんか気にしてねーよ」
「そんなのわかってるわよ。要はプライドの問題!」
ここまでぼっちだと、そこまで理解している。
ぼっちの腹のくくり方をあなどるなよと、変なところにプライドを持ってしまっている。
なんの自慢にもならないのに、染み付いたものってなかなか直らない。