ぼっちな彼女と色魔な幽霊

席に着いて、ヨウとわたしの間にポップコーンを置いた。

一緒に買ったアイスティーを飲む。

さっきヨウがデートって言ったとき笑ってしまったけど、

本当にこれはデートというやつなんだろうなという気がした。

よく考えれば中学生のときに憧れていた王道デートのシチュエーションの中に、今、自分はいるんだ。

男の子と二人で遊びに行ったことがないから、ピンとこなかった。

それか相手がヨウだからかな。

チラリとヨウを見ると、目があった。

「何か言いたそうだな」

「別に」

館内が暗くなっていき、喋り声も聞こえなくなる。

映画館に二人で行くことがデートだって発想になるくらいだから、ヨウにとっては生前当たり前にしてきたことなのかな。

……彼女と。

どういう子と付き合ってきたんだろう。

好きな子にしか優しくしないなら、ああいうとき、ポップコーンはキャラメルにしてあげるのかな。

想像つかない。

ぼーっとしていたら、口にポップコーンを入れられた。

「んっ」

「ハーフ」

二種類同時に入れるなんて、こいつ。

だけど、なんだろ。あまじょっぱさが味覚から、全体に広がっていくような変な感覚になった。
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