ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「うぎゃああああっ!」と、うずくまってしまった。
「……うっせーな」
すごい不機嫌そうな声。
あれ?
しっかり聞こえる。よく心霊番組でやる幽霊の声が紛れ込んでしまった……みたいに、何度も繰り返さないと聞き取れないような声じゃない。
すごい人間っぽい生々しい感じがする。
恐る恐る振り返ると、壁に背中を預け腕組みをしながら、わたしを見下げている男の子がいた。
チェックのパンツに紺色のブレザー。指定のネクタイはせずに、ボタンを開けて見える肌。
少し明るい髪の毛に、目鼻立ちの整った顔。印象に残る澄んだ瞳。
そう、この前図書室で見た人だった。
生身の人間。
でもどうやって入ったんだろう?それともさっきからいたのかな?
隠れるところがあったのかなと、辺りをぐるりと見回した。
あるわけがない。やっぱり入り口はひとつだし、荷物置き場と化してるようなところに隠れるような場所は見当たらない。
その男の子は、わたしに目線をあわせようとしたのか、しゃがんだ。
「何ですか?」
「何ですかじゃねーよ。お前が呼んだんだろ?」
「はっ?」
「助けてって言っただろ?」