ぼっちな彼女と色魔な幽霊

「お姉ちゃん、大丈夫?」

わたしのシャツの裾が引っ張られた。

見ると、見覚えのある小学生くらいの男の子。どこで見たっけと思い返すと、海で見かけた幽霊みたいな子にそっくりだった。

「えっ?」

「ひとりで喋ってるから」と、微笑んだ。

可愛い笑顔だけど、訊かれているのは、すごく恥ずかしいことだ。

「だ……大丈夫。ひとりで話すの好きなんだ」

「なんだぁ。お姉ちゃん実は何か見えてるのかと思ったのに」と、口を尖らせた。

この子幽霊なのかな?

やっぱり違う気もする。すれ違う人がたまに男の子に視線を向けるからだ。

確実なのは、ヨウみたいに触ってみれば、わかるはずだけど、幽霊だったら恐くて出来ない。

「ママはいないの?」

「いるー。向こうでお花選んでるの」と、カフェの隣に並ぶ花屋さんを指差した。

「そっかぁ。あのさー最近海に遊びに行ったりした?」

「海?なんで?」

「なんかねー。この前、海で見かけた気がして」

幽霊じゃありませんようにと心で祈った。
< 160 / 333 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop