ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「お姉ちゃん、大丈夫?」
わたしのシャツの裾が引っ張られた。
見ると、見覚えのある小学生くらいの男の子。どこで見たっけと思い返すと、海で見かけた幽霊みたいな子にそっくりだった。
「えっ?」
「ひとりで喋ってるから」と、微笑んだ。
可愛い笑顔だけど、訊かれているのは、すごく恥ずかしいことだ。
「だ……大丈夫。ひとりで話すの好きなんだ」
「なんだぁ。お姉ちゃん実は何か見えてるのかと思ったのに」と、口を尖らせた。
この子幽霊なのかな?
やっぱり違う気もする。すれ違う人がたまに男の子に視線を向けるからだ。
確実なのは、ヨウみたいに触ってみれば、わかるはずだけど、幽霊だったら恐くて出来ない。
「ママはいないの?」
「いるー。向こうでお花選んでるの」と、カフェの隣に並ぶ花屋さんを指差した。
「そっかぁ。あのさー最近海に遊びに行ったりした?」
「海?なんで?」
「なんかねー。この前、海で見かけた気がして」
幽霊じゃありませんようにと心で祈った。