ぼっちな彼女と色魔な幽霊

運動場に続く階段を降りてる途中で、わかった。

長い髪を後ろでひとつに束ねて、運動場を見守る女神みたいな眼差しで見ている人。

あんなに綺麗で目立つ人なのに、わたしどうして同じ高校って気がつかなかったんだろ。

「可愛いじゃん」と、ヨウも珍しくテンションがあがっている口調で言うものだから、「うるさい」という意味で横目で睨んでみるけど、意味なし。

「早くいこーぜ」と、先に行って手を振る。浮かれてるようにしか見えない。

なに無邪気になってんだか。

キャラじゃないでしょと、毒づくけど口に出さなかった。

「花愛先輩」と、才伽ちゃんが声をかけて振り向く。

その仕草もなんか可憐だ。

「はい?」

「あの図書委員会の松井って言います。図書室の広報誌を今作っていて先輩にお願いしたいことあって来たんですけど、今、大丈夫ですか?」

「えっ?わたしに?」と、驚かれたけど少しならと、邪魔にならないように階段の下に移動した。

「あの実は、広報誌の記事に先輩のインタビューみたいなの載せたくて。
本について色々話を訊かせてもらえたらなって思っていて」

「インタビュー?」

「あっそう言っても、好きな本とか月に何冊本を読むかとか簡単なお話だけでいいんで」

「なんでわたしかな?」と、困惑した顔。

「去年のミスということでぜひお話訊かせてもらいたいんです」

何も口を挟んでいなかったのに「ぜひっ」とだけ、わたしは言っていた。

先輩はわたしが同じ中学だってことも、きっと知らないんだろうな。

そのくらい今日も別世界の人のように輝いてる。

ふと運動場を見ると、ヨウが風をきるようにひとり走っている。

疲れたのか、パタリと後ろから気絶するみたいに寝ころび、空を見上げた。

何やってんだか。

少し微笑ましくも見えた。
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