ぼっちな彼女と色魔な幽霊

電車を降りると改札の前に、ヨウがいた。

「おっせーぞ」と、ポケットに手をつっこんだままぶっきらぼうに言う。

「どこ行ってたの?」

「あー。ちょっとな」

「ちょっとって……心配してたんだよ」

「大丈夫だって。危ないことあるわけねーんだから」

「そうじゃなくて……」と、口をつぐんだ。

言わなくていい。ヨウの自由だ。そう言い聞かせた。

改札を抜け歩く。

西の空が眩しくて美しいとき、わたしはときどき天国かと思う。

雲の隙間からくつろいだ神様の黄金の足が伸びているから、あんなに眩しいんだ。

足を止め振り返ると、ヨウはしっかりと見上げてた。

色を持たなかった瞳に、光や雲や色彩が溶け込んできれい。

「空がきれいですね」

気づいたら呟いていた。空のようでヨウに言ってるみたいに。
< 180 / 333 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop