ぼっちな彼女と色魔な幽霊

「なーにやってんだよ、こんなとこで」

見上げるとヨウが見下ろしてた。

「ヨウ」

ジャンプして降りると、目線をあわすようにしゃがむ。

「カレーごめん」

「いいよ」

「当たりいれてあげたのになぁ」

「当たり?」

「人参のハート」

「人参の気持ちかよ」

「あ……間違った。ハートの人参」

「ボケ。それより立てるか?足捻ってない?」

「うん」と頷いた。

ヨウの肩に腕をかけさせられ、ゆっくり立ち上がる。

「ちょっとすりむいたくらい。平気」

「また周り見ないで足でも滑らせたんだろ」

へへっと笑えたけど、言い返す元気がなかった。

どこ行ってた?とか、訊きたいけどそれも言えない。

ヨウの気持ちを追い詰めそうで。

ヨウは訊いた。

「泣く?」

「なんで?」

「雨降りそうだから」

ぽつぽつ雨が降る。

砂利にシミをつくり、風が涼しさを増す。なにか浄化するみたいに。

今なら、泣いても見つからない。

だけど、泣いたら自分がかわいそうになるからな。

「泣かない」

笑ってヨウに背中を向けた。

雨はわたしの中を通らず、身体や髪をいたわるように濡らしていった。
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