ぼっちな彼女と色魔な幽霊
わたしは才伽ちゃんが泣いてしまったのかと心配になったけど、覗きこむ勇気がなかった。
なんて言えばいいのか、わたしが部外者すぎて、わからなかったから。
「新」
遠矢くんが声をかけた。
「俺もそう思うけど」
「なんだよ。二人して……」
そう言って二嶋くんは唇を噛む。まだ自分の中で迷っている、決められない、葛藤してる、そんな複雑な表情に見えた。
「たまには自分の気持ちだけ大事にしたっていいと思う。二嶋はいつも周りのことばっか考えすぎて自分のこと見えないんだから」
才伽ちゃんは顔を上げると、はっきりした口調で言った。さっきまでの泣き出しそうな彼女はもういなかった。
二嶋くんは溜め息を吐き、苦笑する。
「お前らうっせーな。わかったよ。言ってくる。言ってくればいいんだろ」
投げやりだけど、どこか迷いを振り切ったような朗々とした言い方だった。
立ち上がり、「カラオケまた今度。ひな子ちゃん、ごめんね。俺、ちょっと用事ができた」と気遣いの言葉をかけると、階段をおりて行った。
花愛先輩の元へ向かったんだって、わたしでも、わかった。