ぼっちな彼女と色魔な幽霊

「つうか別に今行けとは言ってないし。
お前等は本当に単純だよな」と呆れたように遠矢くんは才伽ちゃんを見た。

「等、ってあたしも?」

「そりゃそうだろ」

才伽ちゃんは「まあ、あたしと二嶋のいいとこ、そこしかないじゃん」と言った。

アーケードから二嶋くんの背中が見えなくなる。

才伽ちゃんは、ほっとしたような表情でトレイにあるポテトを摘んだ。

それから気恥ずかしそうに、「ごめん。急に声荒げて」と、わたしに謝ると

「二嶋のポテト余ってるの食べちゃおう!つうかカラオケさーどこ行く?この前割引クーポンもらったとこあるからそこでいいかな?」と、笑って言った。

頷きながら、自分の気持ちを言わない才伽ちゃんの本当の気持ちはわからないのに、山下さんからの言葉を聞いただけで、わたしは、今才伽ちゃんの気持ちを想像してかわいそうだと思ってる。

勝手に同情してる。

失礼だと思う。

ただ山下さんの言ったように、才伽ちゃんは二嶋くんが好きで、二嶋くんは花愛先輩が好き。

そしてわたしはなにも知らなかった。

それは全部本当の話でなにひとつ間違ってなかったんだな、と思った。

そのくらい、才伽ちゃんの下手くそな笑顔も二嶋くんの迷う顔も、誰かを思わないと浮かび上がらないそんな表情に見えたからだ。
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