ぼっちな彼女と色魔な幽霊
ヨウは身を屈め、わたしに目線を合わすと微笑んだ。
「そう思えるくらい、好きな友達できて良かったじゃん」
「へっ?」
「へっ? じゃねーよ。友達できて、良かったな。ひな子」
「友達って、わたしが一方的に思ってるだけだよ?
それって、友達できたなんて言えないでしょ?
だって、わたし、才伽ちゃんから、何にも頼りにされてなかった。
この前、ヨウ言ってたじゃん。
わたしと才伽ちゃんは、物語では第一章だって。
あれから少しは仲良くなれたと思ったのに、第一章どころか、わたし、ずっとプロローグだよ」
「バカ」
「バ……カ?」
「ちゃんと相手の為になりたいと思えるようになったんだろ? それでいいじゃねーかよ」
それでいい?
だって、現にわたしは才伽ちゃんに友達と思われてなくて、力になりたいと思うのはわたしだけで――。
気持ちを頭で整理していると、「ひとりごと?」と、声をかけられ、身がすくんだ。遠矢くんだった。
「あ……あれ?」
「まあ、いいけど」
手にはグラスを持っていて、ドリンクバーに向かうようだった。わたしの脇を通っていく。いつからいたんだろう。怪しい奴に思われたに違いない――慌ててカラオケルームに引き返してしまった。