ぼっちな彼女と色魔な幽霊

才伽ちゃんは目を丸くしてから、優しく微笑んだ。

「そうだね。ごめんね。わかってる。わかってるけどさ、一度失うとなんか怖いから、最初からないものだと考えたくなるんだ」

「……あ」

そっか。才伽ちゃんは、わたしとは違う。

沢山友達がいて、離れてしまった痛みは、わたしにはわからないものだ。

何を知ったつもりで、言ったんだろう。あれじゃ、ただの八つ当たりだ。

「西宮さんにも、失礼だもんね」

「えっ?」

「友達なのに」

「友達?」

わたしが聞き返すと、「なんでそこで驚くの?」と笑うけど、思いがけない言葉にドギマギしてしまう。

「気持ちで付き合うか……あたしは、西宮さんみたいに素直じゃないからさ、そういうの難しいけど、大事だね。ありがと」

「えっ……わたしだって、素直じゃないよ」

「そんなに怒れるのに?」

「えっ?怒ってた?」

「少しね。こんな顔してた」

才伽ちゃんが、口をへの字にするから、二人で笑いあった。

もしかしたら、わたしが友達じゃないから、頼りないから言わない――ではなく、言えなかっただけなのかな。

そういえば、わたしもさっき、ヨウに心配をかけたくないと思った。

それはもしかしたら、された方にとっては寂しいことでも、相手は思いやりや気遣い、そういうものだったりするのかもしれない。

ひとりで拗ねていただけなのかな。

色々考えながらも、才伽ちゃんに言われた友達という言葉は、真冬のスープのように、わたしの体に染み渡っていくのは確かだった。

< 213 / 333 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop