ぼっちな彼女と色魔な幽霊
それから、才伽ちゃんは、「二嶋の話なんだけどさ、ちょっと違うんだ。あたしは、もう振られてんだ。卒業式のとき告って」と、伸び伸びとした口調で話し始めた。
「え? そうだったの? 全然そんな雰囲気なかった」
「元々仲良かったからさ。なんつうんだろう。あいつから見たら、同性の友達みたいな感じ?
だから、それを誤解して受けとる女子もいて、色々言われたりしたんだけどね。
だから、まあ振られてからも変わらず友達でいれてんだろうね。
だからあとは、二嶋に幸せになってもらわないと浮かばれない」
浮かばれないなんて、まるで死んだ人のよう。
片思いが実らなかった人は死人のようなものなのかな。
ううん。そんなわけない。だって、今浮かべている彼女の涙はきっと感情や心の沸点があって、自然と湧いてでてくるものだ。
生き生きと輝かせるものだと思いたい。
「ごめんね。西宮さんも好きだったから辛いのにね。あたしだけ辛いみたいに言ってさ」
そう訊かれて出てきた言葉で、わたしの気持ちがはっきりわかった。
「ううん。わたしは憧れだったよ」
恋じゃなかった。
クラスの中心にいて、誰にでも優しくできる二嶋くんにただ憧れていたんだ。
才伽ちゃんは、「あんな耳の遠い男、憧れる?」とわざと茶化して言った。