ぼっちな彼女と色魔な幽霊

「……」

「あれをね、美術部の子達にも見せたのよ。
そしたらね、坂口さんが、去年の文化祭にその人魚を描いて展示した女の子がいたって教えてくれたのよね」

「えっ?女の子ですか?」

「ええ。そう言ってたけど。人魚の絵って言ってたから、たぶんそれじゃないかと思うんだけど。どうしたの驚いて?」

「あっ……いえ。というかこの絵、人魚姫じゃなかったんですね。赤い蝋燭と人魚にはこんなシーン描かれてなかったからそう思い込んでてびっくりしました」

「ああそうよね。わからないはずよ。だって人魚のその後を描いたらしいから」

「その後?」

「船が沈み、冷たい北の海の底に帰った人魚は、きっと人に裏切られた哀しみを背負ったままそこで生きていったんじゃないか……。
と、人魚のその後を想像して描いたらしいわ。坂口さんなら絵を描いた子知ってるかもね」

「そう……ですか。でも部長さんに前、訊いたときには知らないって言われました。他に誰かわかりそうな人っていましたか?」

「んー。そうねぇ。絵が展示されてたって話になったとき、周りにいた子は初耳みたいな顔してたからなぁ。ごめんね、ちょっとわからないわ」

「そこにいたのって美術部全員でした?」

「大体の子はいたかな?ちゃんと覚えてないけど」と、困った顔で笑われた。
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