ぼっちな彼女と色魔な幽霊

しまいには珍しい人魚を欲しがった香具師が不吉なものだから手放したほうがよいという言葉で、今まで育ててくれたおじいさん、おばあさんはあっさり娘を手放してしまうんだ。

行きたくないと言ったとき、それでもろうそくに絵を描き続けたとき、最後のろうそくを真っ赤に塗ってしまったとき。

娘はどんな気持ちだったんだろうと考えると、悲しくてやるせなくて、苦しくなる。

そして、娘を乗せた船が嵐のせいで、難破したとき、何を思ったんだろう。

そんな人魚の娘のその後を描いた女の子って……。





「なに考え事してんだよ」

「うわっ」

「うわじゃねーよ。何かあった? 電車の中から上の空だったから」

「ごめん。ヨウに話したいことあってさ、海着いたら話すね。なんか落ち着いて話したいから」

さっき駅について、海沿いの道をヨウと歩いていた。

かめちゃんの話をヨウにしたかったけど、通学路や電車の中じゃ人の目が気になり話せないでいたんだ。
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