ぼっちな彼女と色魔な幽霊
17
朝、目覚めてもヨウはいなかった。
戻ってくるかな。
戻ってくる。
大丈夫、大丈夫、言い聞かせて、鞄を掴んで家を出た。
ヨウがいてもいなくてもわたしの一日は日常をなぞるみたいに始まる。
お昼休みの図書室。
借りていた本を返しに行きながら考えた。
ダメ元でかめちゃんに、聞いてみようかな。美術部で退部した子。その中にいるかもしれないし、いなくても辞めた子なら、きっと部活のしがらみなんかないはずだから、情報も入るかもしれない。
よし。やれることをやってみようと気を取り直した。
今日もそんなに忙しそうでもないなと思っていると、当番の子は、勝手にやっていいよーと、わたしをカウンターの中に入れた。
スキャンしてパソコンの画面を確認した。
「返却お願いします」と、運悪く声をかけられてしまった。顔を上げると、美術部の部長さんだった。
わたしのことを覚えていたのか目を丸くしたけど、目を逸らして知らない顔をする。
先週借りた分の返却の確認がすむと、借りたい本がなかったのか部長さんは図書室をゆっくりとした足取りで後にした。
重そうな片足につい目がいってしまうのは、ヨウと話した人魚の娘を思い出してしまうからだ。