ぼっちな彼女と色魔な幽霊

パソコンに目をやる。元の画面に戻そうとしたらキーを押し間違ってしまい、部長さんの今まで借りた本のリストが表示された。

そんなに数は多くないから、すぐに目がついた。

借りたのは去年の秋の日付、そこに『赤い蝋燭と人魚』の童話集があった。

文化祭って確かこのくらいの時期に行われるはずだ。

部長さんは隠ぺいしてるのかな?

それとも本当に知らないのかな?

あの人魚の絵を描いた人のこと、知らないのかな?

もしかして、と思った。

文化祭の絵を描く為に、この本を借りたのかな?

あの絵を描いたのは、部長さん?

だから、部員は知らないけど、部長さんは知っていたのかな?

でもそしたら、自分が描いたのに隠す理由がわからなかった。

またモヤモヤした気持ちがわたしの中を駆け巡る。

違うかもしれない。だけどもしかしたらそうかもしれない。

カウンター当番に戻ってきた子と入れ替わるように、わたしは部長さんの後を追いかけて行った。

廊下を出てすぐに部長さんを見つけた。

「すっ……すみません!」

彼女は振り返った。
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