ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「またあなた?」
「は……はい」
「また幽霊の話でも訊きたいの」
素っ気なく言うと、足を進めた。歩調をあわせて隣を歩く。
「今日はそれじゃないんですけど、また同じことで訊きたいことがあって」
「……また同じこと?」
「はい。あの……この前見た人魚の絵って誰が描いたか本当は知っているんじゃないかと思って」
「知らない。見たことなかったし」
「亀山先生から訊きました。
あの絵、去年の文化祭で展示してたって先輩が言ってたこと。
しかも、美術部の中で知っていたのは先輩だけだって。
他の人は絵自体、知らないのに先輩だけ、あれがどんな絵だったかって話せるくらい、詳しいのはなんでですか?
それに、絵を知ってるのに知らないって嘘をつくのはなんでですか?
わたし先輩が描いたとしか思えなくて……」
「……そういえば、文化祭のとき見たかな。印象なさすぎて忘れてた。ていうか、あんなセンスのない絵、描かないわよ」
「じゃあなんであの赤い蝋燭と人魚を去年借りてるんですか? 絵を描くために読んだんじゃないんですか?」
「あの人魚の絵を見て懐かしくなって、借りて読んでみただけ」