ぼっちな彼女と色魔な幽霊

「じゃあ誰が描いたか教えて下さい。お願いします。本当は何か知ってますよね?」

「さあ。知らないから言えるわけないでしょ」

「それか自分が描いたのに言えない理由があるんですか?」

「だから、わたしは描いてないし、描いた人も知らない。何度も言うけど、文化祭のときに少し見たような記憶があるくらいだよ。しつこいね」

「じゃあ、先輩がわかるのは、文化祭にあの絵が飾られていたことだけなんですか?」

「そういうこと。やっと話が通じた?」

だけど、やっぱりしっくりこなかった。

部長さんは何かを隠してる気がするんだ。

部長さんは、文化祭で人魚の絵を見て本を借りている。

そうなると、文化祭の日、あの絵があったのは確かなんだ。

もう一度考える。

あの絵は文化祭に展示されていた。

だけど、それを知っているのは、なぜか部長さんしかいない。

他の部員は知らない。

なら、あの絵は、本当に文化祭の日に展示されていたのかな。

もしかして、文化祭に向けて描かれた絵で、飾られる前に、何かあったとしたなら――。

美術準備室に隠すように置かれていたのは――。

もしかして――。

「文化祭の日、あの絵は存在してたけど、展示はされなかった。誰かが、美術準備室に隠したから」

「はっ?」

「先輩が、あの絵を隠したから」

歩みを止めて、わたしを睨んだ。
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