ぼっちな彼女と色魔な幽霊
今度はわたしが驚いた。だって花愛先輩は……。
「えっ? でも花愛先輩って陸マネじゃないですか?」
「美術部とかけもちしてたの、あの子。
中学のときにコンクールだか何かに入賞したことがあったみたいで、それで前の顧問がやらないかって誘って仕方なく入部したみたい。
そうは言っても、部室に顔なんか出してたのも最初だけで、すぐ来なくなったけどね。
活動しないのに、なぜか先生のお気に入りだった。
去年の文化祭だってそうだった。
急にだった。
あの子が当日になってあの絵を持ってきて展示してたの。
朝早い展示室、そこに先生と二人でいて褒められてた。
あの子も満足そうな顔をして、その絵の説明をしてた。
でも本当は違った。聞いたんだよね、その後、あの子、あの人魚に自分を重ね見てるって言ってたのを。ただ自分を描いてたのよ。
あの子にとっては人魚の足ひれなんか、自分を輝かせて見せる為の武器でしかないくせに。
本当の醜さを知らない本物の人魚みたいで、あの子もあの絵も気持ち悪かった。
だから隠したの。美術準備室に。
あんな痛い絵恥ずかしくて見てられなかったから」