ぼっちな彼女と色魔な幽霊
息を吐くと、部長は少し冷静さを取り戻したみたいだった。
「なんてね。本当は、ちょっと困らせたいくらいの気持ちでしたの。なんとなく前から嫌いだったから。
なのにあの子、絵が盗まれたこと誰にも言ってないみたいだった。
先生とかあの絵を見た部員だって少しはいたはずなのに、騒ぎにならなかったから。
だから、戻すタイミングもなくてずっと隠しっぱなしになっただけ。
酷いことしたのかもしれないね」と自嘲的な笑みを浮かべた。
こういうとき、なんて言えばいいのかやっぱりわたしにはわからなかった。
だけど、部長さんの話を聞きながら、わたしはまた勝手に切なくもなった。
ある物語が、わたしの中に生まれて、それを読むと主人公の子に少しだけ寄り添いたくなってしまう――そんな切ない物語。
伝える必要もないかもしれないけど、誰かに気持ちを少しでもわかるって言われただけで軽くなることってあると思うんだ。
もしかしてわたしの感じたことは、部長さんの感じたこととは違うのかもしれないけど。
「あの……先輩、実はわたし妄想が得意なんです」
伝えると、怪訝そうな顔でわたしを見た。