ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「只の思いついた話です。でも聞いてください。
わたしは顧問の先生のことが好きだった。
真面目に部活に出ているし、頑張っているのになかなか認めてもらえない。好意的に思ってもらいたくて、わたしはずっと悩んでいた。
そんなとき現れた新入生は、部活に来なくても絵を描かなくても可愛がられる先生のお気に入りとなった。
わたしは先生がその子を特別扱いしているのを見るのも辛いくらい先生のことを思っているのに気づいてしまった。
新入生の子が、なんでも持ってるようにも見えて羨ましかった。
それなのに、ある日わたしが聞いてしまったのは、今までわたしと重ね見てた人魚の娘を新入生も『自分みたいだ』と言っていた話だった。
先生に絵の才能を認めてもらって気に入られているような子が、人魚の娘なわけがない。
この子は、欲しいものを持ってるじゃないか。
わたしは腹が立った。その子のことが憎いとまで思った。だから衝動的に新入生の絵を隠してしまった。
だけど気持ちは晴れることもなく、離任してしまった先生に思いも伝えられないままだ。
これって切なくないですか?
わたしは、切ないです。
すごく、すごく切ないです」
先輩の瞳が揺れた。追われる草食動物みたいに弱々しい生き物みたいに見えた。だけどすぐに呆れたような顔で「よく恥ずかしくもなく、妄想でそこまで話せるね」と、呟いた。