ぼっちな彼女と色魔な幽霊
囁く声に胸が震えた。
「えっ?」
「そんなに先輩のとこ行かせたいの? ひな子は?」
「……行ってほしいよ」
「先輩に触れても平気なの?」
「平気に決まってるでしょ」
「なんでだよ?」
「嫌いだから! ヨウのこと嫌いだから! だからさっさと目の前からいなくなってほしいの!」
いつまでもこうしていられない。だってきっと彼が魂のままここにいられる時間は限られているから。
だから、どうしても行ってほしかった。
何かヒントを探して、身体に戻る魂になってほしい。
きっと、わたしにはできないことだから。
「……わかったよ」
「……」
「じゃあな」と、言うと、手の冷たさも触れた髪の毛先も、ヨウをかたどるすべての気配がなくなった。