ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「バーカ」
聞き慣れた声がした。
「ヨウ?」
顔をあげた。腕組みをして偉そうに見下ろす彼。
一瞬、何が起きたのか飲み込めなくて、少ししてからようやくちょっと口元が笑いたくて緩んだ。
本当にヨウが目の前にいる。
「だからお前の寝言なんか俺には関係ねーんだよ」
しゃがんで、わたしを見た。
「起きたまま寝言、言わない」
ようやくした返事はどうしようもない鼻声で、涙を気づかれない様にそっと指で拭った。
「あのさ、俺らさ好きとか嫌いとかそんな言葉でしか言えない関係なの?」
「えっ?」
「つうか俺にあんなこと言わせておいて、なんにも気づかないのか、お前の頭は。さすが底辺」
「えっ……どういうこと?」
「自分で考えろ」
「……」
「でもまあお前の声は聞こえてる。頭の中に。悲しい気持ちじゃない声が聞こえたのは、初めてだな」
「声って……」
訊きたいけど自分でわかるから、恥ずかしすぎて訊けない。