ぼっちな彼女と色魔な幽霊


階段を上っていた時だった。踊り場にいるヨウを見つけたのは。

ネクタイもせずに着崩した制服姿は、変わってなくて。

少しだけ痩せた気もする。

そこから数段おりたところで、ヨウは顔をあげた。目が合う。

どうしよう。ほら第一声、なんか言わないと、と思っていたのに声がでない。

生きてる。生きてるよね?どうしよう。ママにでも見せて確認してもらいたい。

だってついこの間まで幽霊みたいな姿でいたんだもん。実感が、わかなかった。

ちゃんと魂入ってる姿見るの初めてだし。

なのに、目があったはずなのに、ヨウは気に留める様子もなくわたしの横を通り過ぎて行った。

……。

あれ。あ……。またあれか。

得意の冗談というか、わたしをバカにして笑いたいってパターンね。

そう理解すると肩の力が抜けた。

「ヨウ」と呼び止めた。

足を止め振り返ると、怪訝そうな表情でわたしを見た。
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