ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「ヨウ。何忘れたふりをしてるのよ?」
それでもじっとわたしの顔を見る。
そのまま階段を駆け下りた。
「元に戻ったんだね。良かった。心配してたんだよ」
「……俺に言ってんの?」
「あったりまえでしょ。何言ってんの?」
「俺、あんたのこと知らないけど。人違いじゃない。名前も違うし」
そう冷たく言い放つと、行ってしまった。
……えっ?
……えっ?
えええええええっ?
何をおっしゃいますか。
だってあなたわたしの部屋に住んでベッドを図々しく占領していたじゃない。
文句言いながらわたしの持っている少女漫画をほぼ全部読んでいたじゃない。
ていうかわたしの告白に思わせぶりな答えをしてくれたじゃない。
それなのに……。
それなのに……。
忘れる?
いや絶対、冗談に決まってる。
身体に戻れたからって、調子にのって、どの過ぎた冗談を言っているだけだ。
仕方ない。浮かれてるんだな。
怒りたいけど、今日くらい笑って許してやるか。