ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「元気ないんだね」
「そ……そんなことないよ」
「だって、溜息すごいんだもん」と笑う。子供に心配されるってどれほど。というか、この前も心配されてたっけ。
「この前の喧嘩は仲直りできた?」思い出したように男の子は言った。
「あっ……うん」
「良かったねぇ」と喜ばれるけど、現状は喧嘩どころの話じゃございませんと小さなこの子にでも泣きついてしまいそうだ。
「お姉ちゃんみたいな人、タフっていうんだね」
「タフ?」
「うん。ママがね打たれ強い人はなんでも続けられるって言ってたよ。打たれても立ち上がるって、自分を信じてる人しかできないことだからって」
「……へえ」
小さいのに大人っぽいことを言うのは、親の受け売りかと感心する。
「じゃあね。お姉ちゃん。僕、もう帰らなきゃいけないから」
「あ……うん」
「あっ、それと喧嘩して頭にきても、防火扉を叩いたりとかしたらダメだからね。特に放課後は危ないから、気をつけてね」
「えっ?なんで?」
「開いちゃうでしょ?」
「……ああ。強く押したりすると、開くかもね」
「だから気をつけないと、危ないんだよ」と、急に声が大人の男の人みたいに低くなった。
「えっ?」
「なぁーんてね。ばいばい」
大きく手を振ると、勢いよく駆け出した。角を曲がって見えなくなる。
今の声、普通だった。気のせいか。
……にしてもやっぱり変な子。
あの子のママはいつもどこにいるんだろう。
不思議な感覚になった。
「打たれ強くなれるかな」
呟くと少しだけ、希望が見えた。