ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「空がきれいですねって、なんだ?」
「えっ? なんて言ったの? 空が……きれい?」
「今、脳裏に、アホヅラのお前がそう言ってる姿が浮かんだ。漱石の月がきれいですねのパクリ? 何この記憶?」
わたしは得意気に微笑んだ。
「それって受け取っちゃうよ?」
「はっ?」
「告白の返事って受け取っちゃうよ? だって、ひな子アイラヴユーバーイヨウって意味なんだから!」
「……なに言ってんだよ。気持ち悪い。自分で何言ってるかわかってる?」
「へへへ」
「そう思うのになんでだ」
わたしを見つめるヨウの瞳は、まるで空が溶け込んだ優しいものを見る色だ。
ヨウは躊躇いがちに顔を近づけるから、わたしも少し顔を寄せた。
わたしの唇にそれが重なった。
大人じゃない、子供じゃない、相手をいたわるようなそんなキス。
「……目、あけてんなよ」
「だって、目閉じるの勿体無いもん」