ぼっちな彼女と色魔な幽霊
「わたしが待ってるって覚えてくれてたんだよ。
ありがとう」
微笑むと、わたしの左の手首から何か優しいものが、すり落ちた感覚が伝わった。
「ミサンガ、落ちたぞ」と、ヨウはそれに気づいて視線を落とした。
「いいの」
「いいの?」
「もう夢、叶ったから」
「なんだよ夢って」
「ううん。まだ途中かも。でも今度はヨウがわたしの夢、叶えてくれるよね? それか一緒に叶える? わたし、叶えるの得意だよ! 任せてよ!」
「お前、妄想激しいだろ」
困ったようにだけど、ヨウは笑った。
指先でわたしの濡れた下まぶたを拭いながら。
本物の思いやりはまだその指先くらいしかないのかもしれないけど、わたしをちゃんと思い出せなくても、これからきっと一緒にいる未来を作っていけるんじゃないのかな。
期待したくなるのには、十分なくらいだった。