ぼっちな彼女と色魔な幽霊
家に帰ると、ヨウがベッドで寝むっていた。
本を読んでそのまま寝たのか、本は広げたまま。図書室にもあった童話集だった。
わたしが家にも同じ本があると言ったから、読んだのか。
「帰ってきたのか」
「わ……っ。びっくりした。起きた」
「起きた。飯」
「起きてすぐ飯?ていうか、本当に読んだんだこの本」
「ああ。なんか引っかかったから読んでみた」
「なんか思い出した?」
「……」
「思い出したんでしょ?」
「思い出したっつうか、なんつうか……この本に描かれてる人魚が自分みたいだってこれを俺に手渡しながら言った誰かがいた。
顔とか浮かばないけど、けっこー大事な人だった気がする」
「女の人?」
「うん」
「あの絵のモデル?」
首を捻る。わからないと言うように。
「でもそしたらなんか繋がるね。あの気になった絵は人魚姫だったし。その子をモデルにして描いたなら、都市伝説の幽霊の話にも似てなくもない」
「まあ、肝心の顔とか名前とか思い出せないから、意味ねーけど」
「あの絵の顔の女の子が現れたら、見つけるの早いのにね」
想像してみた。
どんな気持ちでその女の子を人魚姫に見たてて描いたのだろうと。
だけど、そういう感性がわたしにはなくて、脳彼みたいにイメージできない。
だから、やっぱりわかるはずもなかった。