ほんとは優しい私のオオカミ ②
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【零side】



父を撃った。



隣で瑠奈が泣いているのに、慰めてあげたいのに僕は何も言えずただただ立ち尽くしていた。



父との思い出はいつも暗いものばかりだった。



母は物心ついたときにはすでにいなかった。父はそんな母に代わって愛情を注いでくれるわけでもなく、ただ僕を生かした。まるで仕事のように。



まわりの同い年の子とは仲良くなれなかった。だって利益目的の付き合いだし、みんな普通の家庭で幸せそうだから。



そんな中、噂で瑠奈のことを知り僕と同じ不幸な子だと近づいた。すぐに心奪われ一緒に住むことが出来た、これで僕も幸せになれると思ったのに…



父をはじめとした組の幹部が、僕を異常者呼ばわりし瑠奈を僕から離そうとした。



だから、みんなここに閉じ込めて殺した。



父も今殺した。


これで邪魔者は消えた。



なのに父を撃つと同時に自分も撃たれたかのような心にぽっかりと穴が開いた気分だった。



零「…」



八雲「こんなところにいたんですね」



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