友達以上、恋人以上。
私は別に濡れて帰ってもいいんだけどな。
奏多と藍莉に鞄を持たせ、走って帰る。
...いや、無理だ。
あの2人が許すはずがない、むしろ怒られる。
そもそも家の方向が違う。
そんなことを考えながら歩いていると、どこからか大きな声が聞こえた。
「紫乃!!前!!!!」
え、...私?
「へぶっ...!?」
激突した。校舎の柱に。
「〜っ!」
おでこを押さえてその場にしゃがみ込む。
痛い。これは痛い。
もっと早く気づいていれば...!
「...大丈夫?」
誰かが慌てて駆け寄ってくるのが分かる。
声のする方へ顔を上げると、見覚えのある男の子が手を差し伸べていた。
これが、全ての始まりだった。