神様の敷いたレール
今ここから俺の新たな冒険が始まる。

そんな期待を胸に最後のボタン優しく開ける。 

「よし、開いた」 

嬉しさのあまり声が出る。

ボタンを開け終わったと同時にガチャッと扉が開く音がする。

一瞬焦ったがなんてことはない。

傍から見れば着替えているようにしか見えないはずだ。

冷静さを取り戻し、扉の方へ顔を向ける。

「あれ・・・、俺?・・・」

そこには水月、いや誰かと入れ替わった水月がいた。

「水月―、ここで何をしているのかなー」

笑いながら言う水月の姿をした誰か。

でも目が全然笑っていない。

笑顔とは裏腹に殺意の2文字がギンギンと感じられる。

ここでへまをすれば殺される・・・。

そう思った水月は慌てて言い訳を考える。

「お、落ち着け。学校に行こうと思って着替えようとしてたんだよ」

「学校ならとっくに終わったけど」

さっき時計を見たとき15時過ぎてた。

そういえば今日短縮授業で早く終わる日だった。

「じゃ、じゃああれだ。服の中に虫が入って・・・」

言葉を遮るように【水月】の右頬をかするように通り、何かが壁に突き刺さる。

おそるおそる横に振り向くとはさみが口を開けて突き刺さっていた。

しかもかなり深い。

刃が両方とも半分以上突き刺さっている。

壁ってこんな通気性良かったっけ?

当たってたら確実に顔が貫通してたよね、これ。

壁に突き刺さるはさみとかどんだけ切れ味いいんだよ。

ダーツじゃねーんだぞ。
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