SECRET×SECRET
あれ?
桃瀬じゃん…
もしかして桃瀬も寝坊?

なわけねーか。

俺は手摺りに掴まっていた桃瀬に話しかけようとした。

「も…」

けど、やっぱり無理だった。

なんか情けねーよ俺…

なんで話しかけることくらい、できねーんだよ。

あー!情けない!

「あ…。桜井…くん?」

「へっ?!」

「えと…。桜井くんだよね?同じクラスの…。」

「う…うん。」

ちょっとちょっと!!
桃瀬から話し掛けてくれたよ?
やべ…なんか照れる…

「おはよ。桜井くん、遅刻?」

「まぁな…。寝坊した。」

「寝坊?あたしも寝坊しちゃったから遅刻なの。」

「桃瀬が寝坊っ?」

「そ…そんなに驚くことかな?」

「いや、だってそんな風には見えなくて…」

「そうかなぁ?」

「そーだよ。」

「あっ、着いた!これからよろしくね?同じ寝坊仲間として、さ。」

「お…おう。」



笑顔がとても似合う、女の子だった。

俺は奈々と話すだけで、幸せだった…
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