【BL】Select
昨日の過去と明日の未来
「後悔してる。」
徐に呟かれた言葉。
「君を、巻き込んだこと。」
そう言って彼の手が頬を撫でた。
「俺なんかに捕まらなければ、もっと幸せになれたはずなのに。」
ごめん、と呟いた彼の手を握った。
「そんな未来は、僕の前にないよ。僕の未来には、貴方が必要だから。ねぇ、後悔なんて必要ないんだよ。」
慰めなんかじゃない。
僕の本心。
「みんなの前で堂々とすることも、子供を授かることも出来ない。後ろ指を差され、白い目で見られる。普通の幸せを俺は君から奪ってしまった。」
「違うよ。僕が貴方との未来を選んだんだ。」
悩まなかった訳じゃない。
それなりに苦悩した。
男である僕が男である彼に抱く感情を、何と呼べばよいのか……。
何度も何度も消そうとして、それでも捨てられなかった。
世の中の摂理に反することでも……
それでも僕は、今目の前にいるこの人との未来を望んだのだ。
「幸せは、人から決められるものじゃない。自分で決めるもの。ねぇ、聞いて。僕は今、とても幸せ。」
彼の目を見て微笑んだ。
そうしたら彼は静かに涙を一筋流した。