優しい嘘はいらない
脳裏に浮かぶ残像に羞恥心が起こり、目が潤んでくる。
そんな私を見て意地悪な表情をしていた彼は、私の唇を舌先で誘うように輪郭を辿り、閉じている唇を舌先でノックして誘惑する。
もう、あらがえない。
「…あなたがほしいの」
フッと満足気に笑った彼の頬に手を添え誘うようにくちづけた。
ジンジンと腫れぼったい唇をお互いに食み、舌を絡め淫らなキスに夢中になっていく。そして、体を繋げる時の甘く痺れる感覚に声が漏れ、私の中を貫く彼に乱され自ら乱れていく。
浴室に響くお互いの声は愛の囁きもない…ただ、快楽を求める男と女だった。
ベットの中で大好きな彼に抱きしめられているというのに、心がウキウキしないのは抱かれる事を選んだくせに熱情が冷めると切なくなり胸が苦しくなるから…
…私をガキ扱いしていたくせにどうして抱いたの?
ただ気まぐれで抱いたの?
声に出ない疑問の言葉に彼の寝顔は答えてくれない。
彼の温もりが欲しくて胸に頬を寄せ抱きつくと寝ていたはずの彼が笑った。
「ずいぶんとかわいい事をしているんだなぁ」
頬を撫でる指が顎にかかり唇にリップ音を落としてベットから起き上がった彼は、こちらを見ないで呟いた。
「…送っていく」