優しい嘘はいらない
彼の体に体重をかけて乱れた呼吸を整えようとする私の背を撫でてくれる彼の体温の心地よい暖かさに、そのまま首筋に顔を埋めると、こそばゆいのか彼が笑う。
手加減のなかった彼に仕返しとばかりにグリグリとこすりつけると、ぎゅっと抱きしめてきて笑いを噛み殺した彼の肩が揺れてた。
「可愛すぎだろう‥」
「もう」と、仕返しにならなかった事と彼のセリフに恥ずかしさを感じ、頬を膨らませてみても彼は笑うだけだった…
そして、急に真剣な表情に変わり私を見つめてきた彼は、おでこを合わせて囁いてきて…
「…おまえは俺のただ1人の女だ‥これからもおまえ以外の女なんていらない。愛してる」
予想外のセリフに一粒の涙が頬を伝っていき、彼はそれを舐めとると照れ臭いのか苦笑しながら頬を染めていた。
嬉しいはずなのに彼らしくない甘いセリフと行動に戸惑った私は疑ってしまう。
「そんな嘘つかなくてもいいのに‥ジュエリーを一緒に買いに行く彼女がいるでしょう?」
急に、ぶにゅっと頬を摘まれた痛さに彼を睨みつけると彼は怒っていた。
「女といたのは認めるが、その理由は今は言えない。お前は、その現場を見たから俺の言葉を信じられない
んだろう?」