優しい嘘はいらない
頬を摘まれながらコクンと頷く私の頬を更に引っ張る彼。
痛いんだけど…
涙目になって訴えかけても彼の気は治らないらしい。
信じてもらえない事がそんなに腹だたしいなら、理由を言えばいいのに…
しばらくして困った表情を浮かべ出した彼は降参というように摘んでいた頬を離し、赤くなっているだろう頬を撫でて訴えかけてきた。
「どう言えば信じられる?」
「じゃあ、質問に答えて…」
「あぁ、わかった」
「ガキ扱いしてた癖にどうして抱いたの?」
最初に抱かれた日、結局キスした理由も抱いた理由も教えてもらえなかった。今なら答えてくれる?
「それは…油断していると他の男に持っていかれるって焦ったからだろうな⁈きっと。…あー情けない。こんなこと言わせるな」
鼻先をかき、不貞腐れてしまう彼。
「私は五十嵐さんのなに?」
「俺の大切な女」
即座に返ってきた答えに頬が緩むけど、唇をキュッと引き結び直す私とは対照的な彼は真っ赤になり片手で顔を覆っている。
もう、こんな彼を見たら信じるしかない。
だけど、それならどうしてと疑問が浮かぶから聞かずにはいられない。
「じゃあ、あの女の人は?」
「あぁ、俺の妹だ」
妹の肩に手を添えるだろうか?