優しい嘘はいらない

「あーくそ…信じないよな」

うーん
そうだね…

首を傾げ何も言わない私に焦れた彼は、何かを決意したようにふーと息を吐くと膝の上から私を降ろした。

「とりあえず、服を直してからだ」

乱れた服と髪を直すと彼は私の手を取りアパートを出ようとする。

「どこ行くの?」

「黙ってついて来い」

そう言われアパートの鍵をかけて無言のまま彼に手を取られたままついて行くが、時たま私の様子を伺うようにチラッと見てくる。

その視線に見つめ返すと視線を外してしまう彼にイライラしてきて、黙っているストレスも合わさって立ち止まり掴まれていた手首を振り払ってしまう。

彼は驚いた表情を見せたがすぐにまた手を繋いでくる。

そして今度は指を絡めてきて、側から見たら恋人繋ぎに見えるのに私には逃げ出さないよう拘束しているとしか思えない。

「ねぇ、どこまで行くの?」

「…お前に疑われたままでいたくない。だから、黙ってついて来い」

ついて行くけど、私の質問に答えてないよ…

何も言わせないというように鋭い眼光で私を見下ろし、ぎゅっと握った手を引っ張り歩いて行く彼。

わかったわよ…ついて行けばいいんでしょう。
この、暴君め…
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