優しい嘘はいらない
私の返しに佐藤さんがピューと口笛を吹き楽しげに見てくる。
志乃ときたら、苦い表情をしながら今後の五十嵐さんの動向を伺っているのが見えた。
なにさ…
先にケンカをしかけてきたのは向こうなんだからいいじゃない⁈
私は、目の前のグラスに手を伸ばし、金色に輝く液体を一気に煽るように飲み切った。
りんごの香りがして美味しい。
りんごジュース⁈の訳ないか…
あはははと心の中で笑っていると
「……うわっ、お前、それロックだぞ」
その声が聞こえた時には、カァーと顔が熱くなり、一気に体中が火照りだしていた。
なにこれ?
ふわふわする…
「あーぁ、恭平のブランデー飲んじゃったよ。責任持って家まで送ってやりなよ」
「チッ、勝手にこいつが飲んだのに」
雑音のように会話が聞こえてきて
「そうでーす。だから1人で大丈夫れす…」
「なにが大丈夫れすだ…この酔っ払いが」
「痛いなぁ〜、酔ってないし…」
私の頭を小突いた不機嫌な五十嵐さんの背に向かってバシッと手のひらをお見舞いして、痛みに耐える彼を見て大笑いしていたらしい。
私の記憶はここられへんから曖昧で、後から志乃に聞かされて蒼白することになった。